固定費の削減方法/リース料・人件費・経費を理解しよう

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(本文の最後に動画による解説があります。動画時間:14分24秒)

会計・マーケティング・システム分野をサポートするコンサルタント・三上は、数多くの企業の相談役を務めてきた。

そんななか、経営難にあえぐ寿司屋【銚子一本寿司】のコンサルタントを引き受けることに。

看板メニューの『ことぶき10貫盛り』の利益率(原価率)分析を行い、それをうけての値上げ戦略はトライ&エラーを繰り返しながら良い方向に向かっていた。

しかし、まだまだ気になることが……。

 

固定費の見直し

利益を上げることに成功した三上は、続いて「支出をおさえたい」と考えるようになる。

しかし、ネタの仕入れは大将がこだわり抜いて行っている。

ネタなどの直接的な原価を抑えることは難しいだろう。

 

むしろネタへの徹底的なこだわりこそがこの寿司屋の一番の魅力であり、そこを殺してしまっては本末転倒である。

カウンターで頭を悩ませている三上の耳に、大将とおかみさんの会話が飛び込んできた。

 

おかみさん
ねえ、あんた。そろそろ冷蔵庫のリース期間が終わりらしいのよ。新しいのを選ばないといけないんじゃない?
大将
そうだなぁ。しかし、せっかく売上がのびたのに、また新たな出費になりそうで気が重いなぁ……

 

ガバッと顔を上げて夫婦を見遣った三上に驚き、大将とおかみさんは凍りついた。

 

三上
奥さん、冷蔵庫のリース期間終了って本当ですか?
おかみさん
え、ええ
三上
これは、支出をおさえるチャンスになるかもしれません
大将
冷蔵庫を新しくすることで、支出がおさえられるんですか?

 

珍しく大将が素っ頓狂な声をあげた。

 

費用削減の成功

三上が調べてみると、【銚子一本寿司】の冷蔵庫のリース料率、すなわち一括購入した場合の代金とリースにした場合のリース料総額との差額を年利換算した割合は、単純計算で約12パーセント程度であった。

つまり、冷蔵庫の販売価格とリース料の総額を比較すると、年利ベースで12パーセント程度の手数料が上乗せされているのだ。

 

おかみさん
え、12パーセントの手数料?最近はマイナス金利がどうとか騒がれてましたよね??
三上
この12パーセントという料率には、おそらくメンテナンス費用などが含まれているのだと思います
おかみさん
あら、じゃあ別に損はしてないのね
三上
それは、内容をちゃんと把握してみないと何ともいえません。

「リース」というと、金利相当分もメンテナンス料相当分も全部ごちゃまぜにして「リース料」と表現されてしまいます。けれど、リース料は、金利相当分やメンテナンス料などを論理的に積み上げたものなので、しっかりその内容を把握することが大切です。

逆に、把握しておかないと、気づかないうちに不利な契約を結ばされている可能性がありますよ

 

三上は、大将とおかみさんにリース料の考え方をレクチャーした。

lease5

 

大将
う~ん……
おかみさん
……ひとつ聞いてもいいですか?

一括で購入した場合に比べて、リースの場合は合計で13万円も支払総額が多いですよね。ということは、一括で購入したほうがお得ということでしょうか?

三上
いえ、そういうことではありません。

では、もう少し詳しく説明しますね。まず、「金利相当分」について。

一般的に、お金を借りると借入元本の返済に追加して金利(=利息)を支払いますよね?「リース」という取引も、単純に『モノを借りて、それに対するリース料を毎月支払う取引』と捉えることもできますが、見方を変えると『お金を借りてモノを購入し、借りたお金の返済を行うと同時に金利(=利息)相当分も支払う取引』というように捉えることもできます。少し難しい言い方をすると「リース」という取引は「金融取引」でもあるということです。

大将
う~ん……
おかみさん
え、リースが金融取引?え、え…
三上
リースというと「モノの貸し借り」というイメージが強いかもしれませんが、実は「お金の貸し借り」であるとも考えられるということです。実際に資金繰りがラクになりますよね?
おかみさん
たしかにそうね
三上
モノの貸し借り、つまり「物融(=モノを融通する取引)」であると同時に、お金の貸し借り、すなわち「金融(=お金を融通する取引)」でもあるということなんです
おかみさん
ちょっと難しいけど、なんとなくわかった気がするわ
三上
ちなみに金利(=利息)の利率は、
・世の中の金利動向、
・借りる人(債務者)自身の財産や営業の状況
という2つの要素によって決まります。

“世の中の金利動向”は、国債の利率をイメージするとよいです。今は、史上空前の低金利であり10年国債の利回りはついにマイナスに突入しました。

“借りる人(債務者)自身の財産や営業の状況”とは、財産があり負債も少なく、事業の状況がよい人は低い金利でお金を借りることができるが、財産がないが負債はあり、事業の状況が悪い人は金利が高くなる、あるいは借りることができないということです。

そして、実際にリース会社では、リースの対象物件(リース資産)の購入代金と金利相当分を加味して「リース料」を決めます

おかみさん
なるほど~。

今までの話を簡単にまとめると、一括購入と違って、リースは分割で支払いを行うのと同じだから、利息相当分が必要になるってことよね?

三上
そのとおりです!では次に、「メンテナンス料相当分」について。

これは、「リース料」に含まれる場合もあれば含まれない場合もあります。一般的に、例えば、
・エアコンのメンテナンス
・店舗の掃除
・植物の定期的な入れ替えサービス
など、何かしらのサービスの提供を受けて、それに対する対価を払うということはたくさんありますよね。それと全く同じで、「冷蔵庫の定期的なメンテナンス」というサービスが「リース」という契約に含まれていて、それに対する対価が「リース料」に含まれているということです

おかみさん
うーん、なるほど。ということは、メンテナンスは不要だから、その分安くしてくれということもできるんですか?
三上
はい、そのような契約変更をリース会社が受け入れるかどうかはリース会社との交渉次第ですが、法律上できないとかそのようなことはありません
おかみさん
あら、じゃあどうしましょうか……
三上
冷蔵庫の調子が悪くなったりとかそういうことは今までありましたか?
大将
おぉ、しょっちゅうじゃないけど、特に夏場なんかはおかしくなることはあったね。毎月、定期的にチェックには来てくれるんだけど、その時はすぐに来てもらって修理してもらったな
三上
メンテナンスが含まれない契約の場合、トラブルが発生した都度、誰に修理依頼をするかを調べて、すぐに修理に来てくれるか否かを確認して、という手順を踏むことになりますね。生ものを扱っている寿司店という特性を考えると、対応の遅れはかなりのリスク要因です。

また、「リース契約」に含まれるメンテナンス料が高いのか安いのかも、トラブルの発生頻度や対応の速さ、丁寧さを総合的に考慮する必要がありますし、複数のリース会社を比較してみる(「相見積もり」の取得)ということも大切です。

大将
なるほどな、こうやって考えてみるとやっぱりメンテナンスは必要だな。なによりも、ネタの管理を考えると多少のお金はかけてでも万全の体制をしいておきたい
三上
そうですね。冷蔵庫が故障してその復旧が遅れたら、ネタが使い物にならなくなってしまう可能性があります。そうしたら、何十万円、もしかしたら百万円規模の損失になってしまいますからね。事業における「リスク」を想定するのは超重要です。

メンテナンスの料金だけはしっかり比較して検討するようにしましょう

おかみさん
三上さん、ちなみに一括で購入した場合って、その廃棄とかはどうやるの?何年かしたら使い物にならなくなって、必ず廃棄が必要になるわよね
三上
もちろん、自分たちで廃棄しなければいけません。お皿が壊れたら自分で捨てないといけないのと同様で、購入した以上は廃棄の責任は購入した人にあります。業務用冷蔵庫なので、廃棄にもそれなりにお金がかかると思います。リースの場合は、契約にもよりますが、通常はリース期間が終わった段階でリース会社が手配をしてくれます
大将
う~ん、その点でもやっぱり「リース」にしたほうがいいな。一括購入と比較して多少のお金が上乗せされるとしても、そのほうが寿司屋の経営に集中できる気がする。寿司の品質以外のことに気を回したくねぇや
おかみさん
そうね
三上
では、リース会社と連絡をとっていただけますか?とにかく内容をちゃんと把握するようにしましょう
おかみさん
この2社にお世話になっていて……

 

と2枚の名刺を引っ張りだした。

リース会社との打ち合わせ当日は、三上も同席した。

これまで言われるがままに契約をしていた【銚子一本寿司】だったが、今回は違う。

 

三上
リース料率はどんな内訳なんですか?
三上
メンテナンスの内容は?

 

大将の隣に座った三上が、よどみなく質問を繰り出したのだ。

そして、打ち合わせの最後は

 

三上
少しだけお時間をください。一応ですが、他も含めて検討したいので

 

と締めくくった。

その結果、両社ともにリース料を下げることを提案してきた。

 

見積もり表を覗き込みながら、三上は意気揚々と電卓を弾く。

その手元を興味深そうに眺めていた大将と奥さんに向けて、

 

三上
3つのリース契約の合計で総額10万円ほどの支出の削減に成功しました

 

と、三上はニッと笑った。

 

固定費は定期的な見直しが必要

最大の固定費である人件費の特徴を知っておこう

三上
大将、せっかくの機会なんで、ネタにかかる費用以外の費用を全体的に見直しましょう。ちなみに、ネタ以外の費用で一番かかっているものって何かわかりますか?
大将
う~ん、なんだろう……水道代とかはかなりかかってるかもしれねぇなぁ
三上
確かにかなりかかってますね。飲食店の特徴ですね。

けれど、一番かかっているのはおかみさん、つまり奥さんの給料です。まぁ、奥さんの給料なので費用という認識はそもそもないかもしれませんが。

ここでしっかりと認識しておいてほしいことは、

  • 給料などの人件費は非常に高いということです。常勤で雇えば、最低でも月に20万円弱はかかってしまいます。
  • しかも、一般的には、一度雇ってしまうとそれを解雇することは容易ではありません。
  • さらに、給料を支払う際は所得税等の源泉徴収を行い、その人に変わって納税をする必要もあります。
  • 法人として事業を行う場合や、個人事業でも一定の条件に達すると社会保険への加入も義務付けられます。
  • 社会保険料は雇用主と従業員の折半になるので、ここでも雇用主には追加の費用が生じることになります。

つまり、人を雇うということは、お金も手間もかなり必要となるんだということを認識しておいてください

大将
そうなんだ、知らなかった……

 

経費削減のためには、まずは経費の内容の把握から

三上
通信費も意外と多いような気がしたんですが、内容は何ですかね?
大将
なんだっけな…えーと、固定電話が2つと、俺の携帯電話と、出前用の車の携帯電話と、それと……おい、NTTの明細もってきてくれ
おかみさん
はいよ。それとクレジットカードの明細も一応もってきましたよ
大将
ん、んんん、、、NTTの明細に記載のあるこの1,500円ってなんだろ?それと、クレジットカードの明細に英語で書いてあるこの3,980円ってのもわかんねぇな
おかみさん
なんでしょうねぇ。忘れちゃったわ、あはは
三上
では、せっかくの機会なので内容を確認しておいていただけますか。月々数千円でも、年間でみたら結構大きな金額になりますからね。経費は、ひとつひとつの金額が小さくても、ちりも積もれば意外と大きな金額となってしまうので注意が必要です

 

節税の観点:費用にできるのにしていない項目はないか

三上
逆に交際費として処理されている金額が意外と少ないという印象を受けたんですけど、こんなものですか?
大将
う~ん、そもそも多いとか少ないとか考えたことないからなぁ。税理士の先生も何も言ってこないし、そんなもんなんじゃねぇの?
三上
今、大将のお財布にレシートとか領収書とか入ってないですか?
大将
ああ、何枚か入ってるよ

 

三上は、レシートと領収書にざっと目を通した。

 

三上
ゴルフやられるんですね。これは誰と行った時のものですか?
大将
それは、昔からのゴルフ仲間と行ったときのやつだ。そいつが年に1回開催してるゴルフコンペに参加したんだ
三上
そのゴルフ仲間の方は、【銚子一本寿司】のお客さんですか?あるいは、将来的にお客さんになる可能性はありますか?
大将
ああ、月に1回は出前とってくれるよ。店にも月に数回は来るかな
三上
じゃあ、立派な交際費ですね
大将
え、そうなの?ゴルフ楽しんできただけだけど
三上
でも、そうやって良い関係を築いているからこそ月に何回もお寿司を注文してくれるんですよね。お客さんをリピートさせるための立派な経費ですよ。

ゴルフコンペのあとに表彰式とか懇親会とかありませんでしたか?その時に会費は取られませんでした?

大将
ああ、やったよ。会費は2,000円だった。でも、領収書は渡されなかったなぁ
三上
じゃあ、それをメモした紙を残しておいてください。金額と日付と内容と参加者の名前を。コンペの参加者全員は大変だと思いますので、代表的な数人でもいいですし、順位表をセットで保管しておいてもいいです。領収書が渡されないケースでは、このように事実を証明できるような記録を残しておいてください
大将
へぇ~、メモでもいいんだ。領収書が絶対に必要なんだと思ってたよ

 

三上
このカフェの領収書はどうですか?
大将
ああ、それはかみさんとコーヒーを飲みにいったときのやつだ。
三上
どんな話をしました?
大将
孫の話とか
三上
とか?
大将
う~ん、孫の話とか……あとは、かみさんが何かしゃべってたな、あんまり覚えてないけど
おかみさん
もうすぐ完成するうちの近くのショッピングモールの話をしてたわ
三上
なるほど、この領収書は経費ではないですね

 

三上
もうひとつあるこのカフェの領収書も同じですかね?
大将
ああ、その時は俺ひとりで行ったんだ。三上さんに話した売上目標を達成するにはどうしたらいいかを考えてたんだよ。うちでやるよりもカフェでやったほうが集中できるときがあるんでね
三上
なるほど、では立派な経費ですね
大将
え、そうなの?
三上
事業計画を練るための立派な経費です。「雑費」などの費用項目でよいと思います。どの費用項目にするかは最終的には税理士さんが適当に振り分けてくれるので、レシートの裏に『今後の事業計画を作った』などとメモを残しておきましょう。

自分で事業をやられている方は、常に事業のことを考えていることが多いですし、お金の使い方もなんだかんだで事業のために使うことがほとんどです。なので、事業のために使ったと説明できるものは費用として計上しておくべきです。そうすることで、支払う税金も適正なものとなりますよ

大将
なるほどねぇ、なんとなく交際費とかの経費にすることに後ろめたさのようなものを感じることがあったけど、よくよく考えてみたら三上さんの言うとおりだな。全く事業とは関係のない出費を探すほうが大変かもな
おかみさん
だからって、純粋な遊びの領収書まで経費だとか言い出さないでね。わたしがしっかりチェックしますから

 

そう言うおかみさんは笑顔であったが、その眼光は鋭かった。

 

動画によるポイント解説

ポイント部分を動画で解説しました(動画時間:14分24秒)。

 

←第1話:『販売価格の設定と利益率(原価率)の分析/トライ&エラーを繰り返せ!』へ戻る

第3話:『ホームページ(WEB)を利用した集客方法/親近感・専門性・道作りを意識する』へ進む→

 

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